近年、不動産投資の選択肢が広がっています。
主には、次の3つ。
- 現物の不動産投資
- REIT(不動産投資信託)
- 不動産投資クラウドファンディング
この中でも、1万円からという小口投資ができる不動産投資クラウドファンディングが注目を浴びつつあります。
不動産投資をしてみたいけど、
- 現物の不動産を買ってみたいけど資金がない、ローンを借りるのも怖い
- REITは分散投資で安定している、けど分散だと不動産投資をしている実感がない
- 投資するのであれば、投資対象を見て、知って、判断したい
そんな人には、不動産投資クラウドファンディングがおすすめです。
この記事は、不動産投資クラウドファンディングについて、仕組み・おすすめの業者6選を解説します。
不動産投資クラウドファンディングの仕組み
不動産投資クラウドファンディングには、主につぎの2つがあります。
- ファンド型クラウドファンディング
- 貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)
それぞれの仕組みを解説します。
ファンド型ファンディングの仕組み
ファンド型の流れはつぎのとおりです。
不動産特定共同事業法に基づき、
- 不動産特定共同事業者(=営業者)が、出資者(ユーザー)と匿名組合契約を締結
- ファンド総額の内、約10~30%を営業者が劣後出資、残りをユーザーが優先出資(優先劣後方式)
- 運用中の賃料収入・対象不動産の売却益が、配当の原資
- 利益の配当順位は、優先出資者のユーザー、劣後出資者の営業者の順
図で見たほうが分かりやすいので、次を見てください(引用元:RENOSY ASSET/運営会社 ㈱GA technologies)。
優先劣後方式の特徴は、
- ユーザーに優先的に利益が分配される
- 対象不動産の評価額が低下しても、劣後出資分から毀損される
対象不動産の評価額が市況により低下して売却損が発生した場合でも、劣後出資分から売却損が充当されます(下図)。
ユーザーの元本は確保されませんが、優先劣後方式により元本の安全性を高めています。
劣後出資の割合は、運営会社により異なります。
メモ
- オンラインで手続きが可能
- 原則、運用期間中は解約できません。但し、運営会社の信用低下が明らかになった場合などやむを得ない時は解約可能。
貸付型ファンディングの仕組み
ファンド型は、直接、対象不動産を取得し、賃料収入・売却益を配当原資としました。
一方、貸付型ファンディングの場合、
- 運営会社が、出資者(ユーザー)と匿名組合契約を締結する
- ユーザーが出資した資金を、運営会社を通じて、不動産事業を行いたい事業者(融資先)に対して貸付する
- 利益の配当原資は貸付の利息となる
ファンド型と異なり、優先劣後方式がありません。
そのため、貸付先の投資不動産の価値の見極めが重要となり、運営会社の知識・経験が求められます。
また貸付方法は2種類あり、どちらかもしくは両方を組み合わせて貸付を行います。
- シニアローン
- メザニンローン
シニアローンは通常タイプの貸付ですが、メザニンローンへの返済はシニアローンに劣後します(返済順位が後)。
返済し得る資金が、貸付金を下回った場合、シニアローンから優先的に返済されるため、メザニンローンは一部もしくは全てが返済されないリスクがあります。
その分、メザニンローンの貸付金利はシニアローンと比較して高いのが魅力です。
メザニンローンについて、より詳しく知りたい人はこちらのリンクをご参考ください。
メザニンローン(OwnersBook)
メモ
- オンラインで手続きが可能
- 運用期間中は途中解約できません
- 投資対象の不動産の情報開示が限定的となる場合があります
運営会社
おすすめの6社一覧
サービス名称 | CREAL | OwnersBook | Rimple | RENOSY ASSET | FANTAS funding | Crowd Realty |
運営会社 | ㈱ブリッジ・シー・キャピタル | ロードスターキャピタル㈱ | プロパティエージェント㈱ | ㈱GA technologies | FANTAS technology㈱ | ㈱クラウドリアルティ |
設立年月日 | 2011年5月 | 2012年3月 | 2004年2月 | 2013年3月 | 2010年2月 | 2014年2月 |
上場・非上場 | 非上場 | 東証マザーズ | 東証1部 | 東証マザーズ | 非上場 | 非上場 |
資本金 | 1億円 | 14億円 | 5.7億円 | 11.6億円 | 1億円 | 不明 |
純資産 | 1.7億円 | 78.2億円 | 51.6億円 | 57.5億円 | 9.2億円 | 不明 |
総資産 | 19.8億円 | 443.3億円 | 228.3億円 | 118.3億円 | 41.1億円 | 不明 |
決算期 | 2019/7 | 2019/12 | 2019/3 | 2019/10 | 2020/2 | 不明 |
(※)横にスクロールできます
不動産テックを扱うベンチャー企業に加え、近年、上場企業も不動産クラウドファンディングに参入しています。
運営会社の体力を判断するうえで、上場の有無、純資産・総資産は大事です。
ただ、個人的に言えば、小口投資が可能なことにより元本毀損リスクは小さい分、各社が独自に組成するファンドを自分の好みで選ぶ方が楽しいですね。
幅広いファンドに投資すれば、
- 幅広い投資対象から選べる楽しみ
- 分散投資によるリスクヘッジ
この両方の良いとこ取りができるのが魅力と言えます。
では、各社のサービスの特色を説明します。
CREAL
タイプ |
ファンド型 |
主な投資対象 |
マンション・ホテル・保育園・学校 |
想定利回り(※) |
3.0%~6.0% |
想定運用期間(※) |
4~24ヶ月 |
出資方法 |
優先劣後出資/同社の出資割合10~20% |
最低出資金額 |
1万円 |
(※)2020年5月時点。過去の終了分も含む。
CREALは、非上場の㈱ブリッジ・シー・キャピタルが運営しています。
ホテルや保育園・学校施設への投資が同社の特徴です。
待機児童の解消につながる保育園の開発案件は社会貢献にもつながり、投資に意義を求める人には最適ですね。認可保育園の場合、国からの補助もあり、投資対象としても安定したキャッシュフローを生み出す物件と言えます。
またホテル案件では、運用期間中、出資金額に応じ、そのホテルでの食事や宿泊代が割引される特典もあります。
CREALでは、ファンド案件ごとに画像だけでなく動画もアップ。
情報開示は然ることながら投資へのモチベーションも高めてくれます。
また、安全対策として次の取組をしています。
- 口座内の未投資資金は、信託銀行へ分別管理
- 不正送金対策として、出金先口座は本人名義の口座のみ設定可能
OwnersBook
タイプ |
貸付型・ファンド型 |
主な投資対象 |
マンション・アパート・戸建・ホテル・オフィスビル・商業ビル・旅館・コインパーキング・底地 |
想定利回り(※) |
2.5%~14.6% |
想定運用期間(※) |
1~37ヶ月 |
貸付方式 |
シニアローン・メザニンローン |
最低出資金額 |
1万円 |
(※)2020年5月時点。過去の終了分も含む。
OwnersBookは、東証マザーズ上場のロードスターキャピタル㈱が運営し、おもに貸付型クラウドファンドを採用しています。
貸付型のため、一部の案件では情報開示が制限されます。
同社の投資対象の種類・想定利回り・想定運用期間は幅広く、開発利益目的のマンション・オフィスビル・商業ビルの開発案件が豊富であるのが特徴です。
開発事業者の感覚で投資できるのが面白いですね。
不動産鑑定士など不動産のプロによる自社評価・外部評価により、厳選した投資により元本の安全性を高めています。
具体的な評価方法・金額は案件ごとに開示しています。
Rimple
タイプ |
ファンド型 |
投資対象 |
マンション |
想定利回り(※) |
5.0%~10.0% |
想定運用期間 |
6ヶ月 |
資金拠出 |
優先劣後出資/同社の出資割合30% |
最低出資金額 |
1万円 |
(※)2020年5月時点
Rimpleは、東証1部の投資用マンションのデベロッパーであるプロパティエージェントが新規参入したサービスです。
まだリリースしたばかりで案件数は少ないですが、マンションデベロッパーならではの自社開発のマンションを投資案件としているのが特徴です。
独自の仕組みとして、「リアルエステートコイン」を発行しています。
1コイン=1円として、出資金に充当できます。このコインは、2020年5月現在、下記のポイントから交換できます。
交換可能なポイント
永久不滅ポイント(1,000Pt=4,500コイン)
日常生活で貯めた・余ったポイントをコインに交換してもらうことで、気軽に不動産投資を楽しめる仕組みを提供しようしており、面白いですね。
また同社の劣後出資割合は30%と高めに設定しており、より元本の安全性を高めています。
RENOSY ASSET
タイプ |
ファンド型 |
投資対象 |
マンション |
想定利回り |
4.0%~8.0%前後 |
想定運用期間 |
3ヶ月 |
資金拠出 |
優先劣後出資/同社の出資割合30% |
最低出資金額 |
1万円 |
(※)2020年5月時点
RENOSY ASSETは、東証マザーズ上場の㈱GA technologiesが運営しています。
投資対象はマンションのみで、想定運用期間は3ヶ月とやや短かめとなります。
同社の劣後出資割合は30%と高めに設定しており、より元本の安全性を高めています。
FANTAS funding
タイプ |
ファンド型 |
投資対象 |
マンション・空き家再生 |
想定利回り |
2.5%~10.0%前後 |
想定運用期間 |
約3~12ヶ月 |
資金拠出 |
優先劣後出資/同社の出資割合10~20% |
最低出資金額 |
1万円 |
(※)2020年5月時点
FANTAS fundingは、非上場のFANTAS technology㈱が運営しています。
同社の特徴は、空き家再生という社会貢献性のある案件を提供しています。
空き家の戸建てをリノベーションし、賃貸物件として再び利用価値のある不動産として再生しているのが、面白い取組みですね。
一般の物件と違い、再生リスクがありますが、その分、高い利回りを実現しています。
Crowd Realty
投資対象 |
町家再生(宿泊施設・寄宿舎)・保育園・飲食店・会議室・コワーキングオフィス・海外不動産 |
想定利回り |
4.5%~10.0%前後 |
想定運用期間 |
約1~60ヶ月 |
最低出資金額 |
案件ごと |
(※)2020年5月時点
Crowd Realtyは、非上場の㈱クラウドリアルティが運営しています。
同社の投資のスタンスは、他の運営会社と一線を画します。
個人の出資者と、プロジェクトを起案したいい個人・中小事業者を結びつけるプラットファーマーを、同社は目指しています。
そのため、投資対象は、社会貢献性のある独自の案件が豊富で、
- 町家再生
- 飲食店の新規出店
- 会議室・コワーキングの提供
などを取り扱っているのが面白いですね。
各案件には、事業者の思いが込められた動画も視聴できます。
案件ごとに、運用期間の長短、最低投資金額はさまざまです。
案件の内容に応じて、宿泊・サービスの利用などの特典もあります。
単なる投資では満足しない人には、おすすめです。
さいごに
不動産投資クラウドファンディングは、現物の不動産投資と違い、
- 小口資金で投資できる
- 管理の手間が無い
- オンラインで完結できる
今後は、より幅広く拡充していく分野だと考えられます。
是非、お試しください。