これから不動産投資をしようとする人は、その利回りに魅力を感じるしょう。
超低金利のなかで、不動産投資は将来の資産形成に有効な手法だと。
しかし、不動産投資は初期投資が高額のため、失敗を恐れて躊躇する人も多いです。
ただ、特別な事情がない限り、不動産投資が失敗することはありません。
株式投資と同様、長期で保有さえすれば、損することはなく収益を上げることができます。
しかし、なぜ失敗する人がいるかと言うと、
想像以上に手間・知識・判断が求められるから、不動産投資を途中で断念するため、結果的に失敗するからです。
株式投資は放置すればいいですが、不動産投資は放置するわけにはいきません。
この記事は、僕の不動産投資の実績も公開し、初心者が不動産投資を失敗しないために3つのことをお伝えします。
僕が不動産投資を始めた理由
実は、僕が不動産投資を始めたわけではありません。
僕自身は不動産業務に携わっており、不動産投資の手間を嫌っていたので、不動産投資をしようとは思っていなかった。
が、ある日、共働きをしている嫁さんが不労所得が欲しいと言い出した。
「いやいや、不労じやないよ!」
と説得するも、全く聞き入られず。
嫁さんは、不動産投資のハウツー本を買い漁り、自分で不動産業者を回り、気づけば不動産を購入したのです。
その行動力がすごい!
購入した不動産は、不動産投資の失敗リスクも考え、初期投資が低い、築古の団地。
ローンは借りず、現金で購入しました。
超築古なのでリフォームも必要です。嫁さんは自分で業者と打ち合わせ、リフォームも完了。
いざ、賃貸の募集ということで、近隣の賃貸業者に預けました。
ここまで、嫁さんがすべて自分で進めたので、僕は「おぉ、すごい」とそばで見ていたんです。
さて、募集!
、、、が、入居希望者が出てこない。
そして気付けば、募集を開始してから1年が経とうとしている。
不動産は所有するだけでも、ランニングコストが発生します。
毎月の管理費、修繕積立金、さらに固定資産税まで。
「このままでは、現金の支出がどんどん膨れ上がってまずい!」
一方、嫁さんは、すぐに賃貸が決まると思っていたので、賃貸が決まらない期間が長くなるにつれ、テンションが下がる、下がる。
結果、こっちが我慢しきれず、ついにテコ入れすることに。
それが、僕が不動産投資を始めたきっかけです。
約4年の投資収支の実績
購入した不動産は築古の団地
購入した団地の内容は、次のとおり。
築年数(購入時) | 43年 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
所在階 | 1階 |
間取り | 3DK |
専有面積 | 51.18㎡ |
アクセス | JR駅-バス12分-徒歩4分 |
(※)団地の場合、エレベーターが無いので、高層階より1階のほうが需要が大きい
購入資金の内訳
売買代金 | 2,300,000円 |
仲介手数料 | 120,960円 |
登録免許税 | 153,000円 |
司法書士報酬 | 97,000円 |
固定資産税精算金 | 55,904円 |
管理費・修繕積立金精算金 | 20,729円 |
決済額 合計 | 2,747,593円 |
売買代金以外の諸費用も、結構かかります。
所有権を登記すると、後日、不動産取得税の支払い通知が来ます。
不動産取得税 | 167,300円 |
購入時点で築43年。前所有者が新築当初より居住用として住み続けていました。
そのため、室内の設備・建具の経年劣化は相当なもので、リフォームをしました。
リフォーム費 | 1069,968円 |
ここまでの投資額で、合計3,984,861円。
約4百万円の現金支出です。売買代金以上に、お金かかりますよね。
不動産投資の収支実績
約4年の収支実績を公開します。この期間の入退去の状況は次のとおり。
入退去の状況
入居者1人目
賃料 | 45,000円 |
敷金 | 0円 |
礼金 | 45,000円 |
募集から入居まで要した期間(空室期間) | 1年1ヶ月 |
入居期間 | 1年10ヶ月 |
入居者2人目
賃料 | 48,000円 |
敷金 | 0円 |
礼金 | 48,000円 |
募集から入居まで要した期間(空室期間) | 2ヶ月 |
入居期間 | 入居中 |
収支の実績
(単位:円)
投資年度 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 |
空室期間 | 9ヶ月 | 4ヶ月 | 0ヶ月 | 2ヶ月 |
収入 | 0 | 421.500 | 540,000 | 522,000 |
賃料 | 0 | 376,500 | 540,000 | 474,000 |
礼金 | 0 | 45,000 | 0 | 48,000 |
支出 | 1,666,152 | 724,708 | 304,724 | 724,074 |
広告料 | 0 | 120,000 | 0 | 192,000 |
管理費・修繕積立金 | 121,529 | 151,200 | 151,200 | 151,200 |
リフォーム費 | 1,069,968 | 229,420 | 0 | 0 |
美装・修繕費 | 0 | 27,216 | 60,000 | 286,000 |
備品費 | 24,245 | 103,118 | 0 | 1,670 |
減価償却費 | 27,770 | 33,324 | 33,324 | 33,324 |
租税公課 | 321,300 | 523,00 | 52,220 | 52,200 |
火災保険料 | 4,340 | 8,130 | 7,980 | 7,980 |
支払報酬 | 97,000 | 0 | 0 | 0 |
不動産所得 | ▲1,666,152 | ▲303,208 | 235,276 | ▲202,074 |
現金収支 | ▲1,638,382 | ▲269,884 | 268,600 | ▲168,750 |
(※)投資1年目は4月から賃貸募集のため、運用期間は9ヶ月間のみ
(※)現金収支は、不動産所得+減価償却費(非現金支出)で求めています。
なお、取得原価は次のとおり計算しています。
取得原価 | 2,476,864円 |
売買代金 | 2,300,000円 |
仲介手数料 | 120,960円 |
固定資産税精算金 | 55,904円 |
購入時のリフォーム費は、すべて修繕費としました。
リフォーム費が、修繕費・資本的支出に該当するかは、次のサイトが分かりやすいのでご参考ください。
リフォーム支出の考え方(パナソニックリフォーム㈱)
初心者が不動産投資を失敗しないためには
では、僕の不動産投資の経験も踏まえて、3つのことをお伝えします。
「不動産投資で節税」を謳う物件を買わない
給与所得がある人であれば、不動産投資で節税はできます。
不動産所得は、給与所得と合算して所得税・住民税が計算されます。
不動産所得が赤字の場合、給与所得と合算すれば総所得が引き下がるので、納付すべき税金が減り、節税となります。
僕のケースにおいて、例えば、所得税10%・住民税10%(合計20%)の給与所得の人であれば、
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | |
不動産所得 | ▲1,666,152 | ▲303,208 | 235,276 | ▲202,074 |
税金(+:還付、▲支払) | +333,230 | +60,641 | ▲47,055 | +40,414 |
こんな具合で、節税できるわけです。
この節税をまるで得をするかのように、節税を謳う不動産投資の勧誘を見かけます。
そもそも赤字となるような不動産投資は避けるべきです。
当たり前ですが、黒字を確保し、税金もしっかり払えるような不動産を購入することが大事です。
不動産投資の節税の意味
- 不動産所得が赤字
- 他の所得(給与所得など)と合算することで総所得が下がる
- 納税額が引き下がり、結果的に不動産所得の赤字を軽減できる
節税で得するというのは、誤った考え方なので注意しましょう。
専業主婦の人など、不動産所得と合算できる他の所得が無い人は、不動産所得の赤字を軽減できないので注意が必要です。
空室損失を避ける
空室は損失です。と言っても、あまりピンとこない人が多いです。
早期に入居者が決まれば、得られたであろう賃料を逸しているという意味で、損失と言えます。
自分の財布から実際に現金が出ていくわけではないので、損という感覚を持ちずらいわけです。
例えば、次のケースを見てましょう。
例
① 45,000円の成約賃料で、空室期間2か月を要したケース
② 49,000円の成約賃料で、空室期間6ヶ月を要したケース
①は、②より早期に入居者が決まっており、その収入差は、
45,000円×4ヶ月=180,000円
②がその収入差に追いつくためには、
180,000円÷賃料の差4,000円/月=45ヶ月間(3年9ヶ月)必要
もし、入居者が
45ヶ月より短い期間で退居 → ケース①が得
45ヶ月より長く期間を入居 → ケース②が得
空室損失のリスク
高い賃料での成約を望んだ場合、空室期間が長くなれば、相応の入居期間がないと損失となる場合があるということ
長期間入居する人は、個人的な感覚ですが、それほど多くはありません。
一概に言えませんが、経験上、約2年~3年の入居期間で退居する人が多いです。
家主の感情として、よくあるのが、
- リフォーム費が多額にかかったので、募集賃料を高くしたい!
- 物件の購入金額から考えて、高めの賃料を取れるはずだ!
- 不動産価格が上昇しているので、賃料も上昇しているはずだ!
など。
適正な相場の賃料があります。
それを超えた賃料で募集しても、空室損失を被る可能性があることに注意しましょう。
なお、僕の団地の場合、
賃料相場が45,000円~49,000円に対して、当初嫁さんが掲示した募集賃料は55,000円。
さらに、リフォームが十分でない箇所もあり、明らかに相場からかけ離れた水準でした。
そのため、必要なリフォームを追加出費し、募集賃料を修正すると2か月足らずで、入居者が決まりました。
ただ、募集してから入居に至るまでの空室期間は13ヶ月。
その損失額は大きい、、、。
将来の費用に備える
不動産投資では、賃料収入を得る一方、経費が当然発生します。
得られた賃料を全て、生活に使い込んでは将来発生する費用を支払えない事態に陥るので注意が必要です。
僕の団地投資の、現在の表面利回りは、
年間賃料(月額賃料48,000円)① | 576,000円 |
取得原価 ② | 2,476,864円 |
表面利回り(①÷②) | 23.2% |
(※)投資1年目のリフォーム費は経費としたため、取得原価には含まれていません。
(※)前述のリフォーム費を仮に取得原価に含めたとすれば、表面利回り16.2%
表面利回りだけを見ると高い利回りと思われますが、実際は赤字所得の年度があるわけです。
決して経費を無駄に使い込んだわけではありません。
団地のような区分所有の不動産投資の場合、定期的に大きな支出があります。
この支出に備えることが重要です。
大きな支出の例
- 毎月の管理費・修繕積立金
- 退居後の美装・修繕工事
- 広告料・業務委託手数料などの客付会社に支払う報酬
毎月の管理費・修繕積立金も、年間で見れば大きな支出です。
僕の団地の不動産投資では、賃料48,000円に対して、管理費・修繕積立金の支払いは12,600円です。
低い賃料物件の場合、管理費・修繕積立金の比重が大きくなるので注意が必要です。
退居後の美装・修繕工事も、退居の都度、必ず発生する費用です。
部屋の面積によって金額は変動しますが、10万~30万程度要する場合があるので注意しましょう。
僕の場合、1人目の退居後の美装・修繕工事は約30万円弱も(賃料の約6ヶ月分)
新築の分譲マンションであればそれほど工事費はかかりませんが、築古の団地は経年劣化であちこち修繕箇所が生じます。
広告料は、入居者を早期に決めるために不動産会社に特別に支払う報酬です。
法で定められた仲介手数料とは違い、別の報酬となります。広告料はグレーゾーンの報酬のため、呼称も業務委託手数料であったり、様々です。
今の時代はライバル物件は数多あります。その中で、早期に入居者を決めてもらうには、不動産会社に支払う報酬の積み上げが必要になるわけです。
僕の団地の場合、広告料として成約賃料の3~4ヶ月分を設定しています。
そもそも立地がバスでのアクセスを要するため、賃貸の需要が弱い。そのため、やや高めの広告料を設定しています。
さいごに
不動産投資は、収入が得られる一方、学ぶべき知識、判断・手間が求められます。
僕の団地の不動産投資の場合、費用が先行し、赤字を計上しています。
が、決して損しているわけではありません。
今後、空室期間を極力短くしながら運用すれば、いずれ収益を積み上げることができます。
ぜひ、僕のケースを参考にしつつ、不動産投資にチャレンジしてください。